避難所で袋入りのアルファ米を受け取っても、机がなければ食べられるのでしょうか。
私は身体障害があり、食事では右手を主に使います。右手でスプーンを持つと、袋を安定して支える手が足りません。自宅では机に袋を置くため問題になりませんが、学校体育館などの避難所で、食事に使える机を確保できるとは限りません。
そこで、調理済みのアルファ米を十分に冷まし、椅子に座って5口ずつ食べました。70cmの机、膝の上、別の椅子の座面、家族が袋を支える方法を比べました。
結果は、机では1分、膝上では2分でした。膝上ではスプーン約1杯分をこぼし、麻痺側の手で袋を支える必要があり、緊張して少し疲れました。別の椅子の座面ではこぼしませんでしたが、膝立ちになる必要があり、2分かかって疲れました。
机がない場合は、本人が椅子に座ったまま、家族が左側から袋を支えると、机と同じ1分で5口食べられました。こぼれ、疲れ、緊張はありませんでした。
私の場合、袋が食器になるアルファ米でも「食器がいらない」と「机がいらない」は同じではありませんでした。避難所では安定した机を先に相談し、用意できなければ家族が袋だけを支える方法を使います。
これは実際の避難所や災害時の試験ではありません。自宅で各条件5口だけを1回試した結果です。1食を食べ切れることや、他の人にも同じ方法が合うことは確認していません。
30秒で分かる実測結果
| 条件 | 5口の時間 | こぼれ | 麻痺側の支え | 姿勢・感覚 | 判断 |
|---|---|---|---|---|---|
| 70cmの机 | 1分 | 1〜2粒 | なし | 疲れなし | 基準条件 |
| 膝上 | 2分 | スプーン約1杯分 | あり | 緊張し、少し疲れた | 継続案にしない |
| 別の椅子の座面 | 2分 | なし | あり | 膝立ちになり、疲れた | 継続案にしない |
| 家族が左側から袋を支える | 1分 | なし | なし | 椅子に座ったまま。疲れ・緊張なし | 机がない時の代替 |
本人が使ったスプーンは右手です。家族は左側から袋だけを支え、食べさせる介助はしていません。

解決したかったのは「非常食を持っているのに食べにくい」問題
最初の問いは、片手中心でもアルファ米を作れるかでした。しかし、私は袋の開封や調理はできます。
問題が見つかったのは、その後です。
袋入りのアルファ米は、袋がそのまま食器になります。食器を別に用意しなくてよい一方、スプーンですくう間、袋を立てて安定させる必要があります。
両手を使える人なら、片手で袋を持ち、もう一方でスプーンを使えます。私の場合は、右手をスプーンに使うと、麻痺側の手だけで袋を支えることになります。
自宅では、袋を机に置けば問題が表面化しません。避難所で机が使えない場面を考えて初めて、食料の備蓄量とは別に「食べるための支持面」が必要だと分かりました。
東日本大震災後の視覚障害者を対象とした調査では、避難所の食事について「袋を開封できなかった」「受け取る際にうまく受け取れず、こぼした」という回答が記録されています。障害の種類と困った動作は私と異なりますが、食品が届いた後にも、開封、受け取り、保持、食事という別々の障壁があることが分かります。
また、東日本大震災から約1か月後、宮城県内の避難所を調べた研究では、有効回答69施設のうち24施設に栄養支援が必要な要配慮者がおり、高齢や障害などにより普通の食事を食べられない人も確認されました。
これらの資料は、私の方法が安全・有効だと証明するものではありません。備蓄食を「配ったら終わり」にせず、本人が実際に食べられるところまで確認する必要性を示す背景として参照しました。
仮説1:机に置けば、右手だけで食べられる
最初に、普段に近い条件を基準として測りました。
試験条件
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 実測日 | 2026年7月28日 |
| 場所 | 自宅 |
| 食品 | 調理後、十分に冷ました袋入りアルファ米 |
| 食べる量 | 各条件5口 |
| 椅子の座面高 | 39cm |
| 机の高さ | 70cm |
| スプーン | 右手で使用 |
| 試行回数 | 各条件1回 |
袋を70cmの机へ置くと、5口に1分かかりました。こぼれたのは1〜2粒です。麻痺側の手で袋を支える必要はなく、姿勢の負担や疲れもありませんでした。
今回の70cmは、私が試した自宅の机の高さです。「70cmなら誰でも食べやすい」という推奨値ではありません。椅子の高さ、体格、腕の動き、袋の大きさで必要な位置は変わります。
この試験で基準ができました。次に、避難所で机を使えない場面を想定しました。
仮説2:袋を膝へ置けば、机がなくても食べられる
椅子へ座り、袋を膝の上へ置いて5口食べました。
時間は2分で、机の2倍でした。スプーン約1杯分をこぼしました。袋を安定させるために麻痺側の手を使う必要があり、本人は緊張して少し疲れました。
「5口を口へ運べた」という意味では成功です。しかし、災害後に毎食続ける方法としては採用しませんでした。
膝は平らな机ではありません。身体の向きや脚の位置で袋が傾きます。袋へ注意を向けるとスプーン操作が遅くなり、麻痺側の手で支え続ける必要もありました。
今回、熱い状態では試していません。熱湯で調理した直後の袋を膝へ置くことは、こぼした時のやけどにつながるため行っていません。

仮説3:空いている椅子の座面を机代わりにする
次に、別の椅子の座面へ袋を置きました。
5口は2分で、こぼれはありませんでした。ただし、椅子の座面は食事をするには低く、本人は床で膝立ちになりました。麻痺側の手で身体を支える必要があり、食べ終わると疲れました。
膝上より袋は安定しましたが、今度は本人の姿勢が不安定になります。
この結果から、単に「平らな面があればよい」のではなく、本人が椅子に座ったまま使える高さに、安定した面が必要だと分かりました。
空いている椅子が避難所にあっても、私にとって食事用の机の代わりにはなりませんでした。
仮説4:家族が袋だけを支えれば、机なしでも食べられる
机と椅子座面の代用が難しかったため、家族の介助方法を小さくしました。
本人は39cmの椅子に座ったまま、右手でスプーンを使います。家族は本人の左側から袋を持ち、食べやすい位置で支えました。
5口は1分でした。こぼれはなく、本人の疲れや緊張もありませんでした。机の基準条件と同じ時間です。
家族が行ったのは、袋の保持だけです。スプーンを持つ、口へ運ぶ、姿勢を支える動作は本人が行いました。
この方法なら、机が用意されるまでの代替にできます。ただし、家族が毎食ずっと袋を持てるとは限りません。家族も食事、物資受け取り、犬の世話、避難所内の手続きなどを行います。
したがって、私の順番は次のようになります。
- 本人が椅子に座って使える、安定した机を避難所へ相談する
- すぐに机を用意できない時は、家族が左側から袋を支える
- 家族も対応できない時は、避難所スタッフへ「食事介助」ではなく「袋を食べやすい高さで支えてほしい」と具体的に頼む
厚生労働省の資料も、障害児者と家族への避難所支援では、障害特性に応じた配慮が必要だとしています。また、災害時の要配慮者食支援マニュアルでは、避難所に食事介助者がいるとは限らず、障害によって食べられず低栄養にならないよう食器具への配慮が必要だと説明しています。

避難所での判断:「片手です」だけでは必要な支援が伝わらない
「片手しか使えません」と伝えても、必要な支援が机なのか、開封なのか、食事介助なのかは分かりません。
今回の結果なら、次のように伝えられます。
右手でスプーンを使うため、袋を支える手がありません。椅子に座ったまま食べられる高さの、安定した机を使わせてください。机がすぐにない場合は、左側から袋だけ支えてもらえれば自分で食べられます。
家族や避難所スタッフが必要以上に全部を介助するのではなく、できない動作だけを補う伝え方です。
「机をください」だけでなく、椅子に座った姿勢、スプーンを使う手、介助者の立つ側、支えてほしい物まで具体化すると、短時間で伝えやすくなります。
他の家庭で確認する10項目
アルファ米に限らず、避難所や在宅避難で食べる予定の食品を、平時に一度だけ実際の姿勢で確認します。
- 袋や容器を自分で開けられるか
- 脱酸素剤や調味料を取り出せるか
- 水や湯を安全に注げるか
- 食品の容器を片手で安定させられるか
- 箸、スプーン、フォークのどれなら使えるか
- 膝上で傾く、滑る、こぼす問題がないか
- 椅子に座ったまま使える机の高さと位置はどこか
- 介助が必要なら、何を、どちら側から支えてもらうか
- 熱い食品をこぼした時に、やけどしない配置になっているか
- 食後のごみ処理や手洗いまで自分または家族で続けられるか
重要なのは、障害名から方法を決めないことです。同じ片麻痺でも、麻痺側の手で袋を軽く押さえられる人、膝上が安定する人、腕を伸ばしにくい人では結果が変わります。
今回分からなかったこと
今回の結果には、次の限界があります。
- 実際の地震、停電、避難所、体育館、混雑は再現していない
- 同じ袋から各条件5口だけを食べ、各条件で1食を完食していない
- 各条件1回だけで、再現性を確認していない
- 食事までの避難疲労、負傷、寒暖差、余震を再現していない
- 熱いアルファ米では試していない
- 袋の大きさ、食品の粘り、スプーンの形が違う場合を試していない
- 家族が袋を持ち続けた時の介助者側の疲れを測っていない
- 指定避難所で食事用の机を借りられるかは確認していない
- 70cmの机が他の人にも合うとは確認していない
特に、5口食べられたことから「この方法で1食を必ず完食できる」とは判断できません。今回は、短時間で比較するための動作確認です。
よくある質問
アルファ米は袋から直接食べられるので、机はいらないのでは?
袋が食器になるため、皿を別に用意しなくてよい商品はあります。しかし、片手でスプーンを使う人には、袋を立てておく支持面が必要な場合があります。今回、膝上では時間とこぼれが増えました。
膝上でも食べられたなら、それでよいのでは?
5口を食べること自体はできました。ただし机の2倍の時間がかかり、スプーン約1杯分をこぼし、麻痺側の支えと緊張が必要でした。本人は毎食の方法にはしないと判断しました。
空いている椅子を机代わりにできますか?
今回、袋は安定しましたが、座面が低いため膝立ちになり、麻痺側で身体を支えて疲れました。椅子の高さや本人の身体によって結果は変わりますが、私には代用になりませんでした。
家族が食べさせればよいのでは?
今回、食べさせてもらう必要はありませんでした。家族が左側から袋だけを支えると、本人が右手で食べられました。必要な介助を最小限にすると、本人の動作を残しながら問題を解決できます。
避難所には食事用の机がありますか?
施設や開設状況、備品数、利用者数で異なります。机があることと、本人が食事中に使えることも別です。指定避難所へ平時に確認し、発災時は受付や要配慮者支援の担当へ具体的な動作条件を伝えます。
小さな折りたたみ机を持ち出し袋へ入れるべきですか?
今回、携帯机は試していません。机自体の重さ、安定性、持ち運ぶ人、避難荷物全体との優先順位を確認せずには勧められません。まずは避難所の机を相談し、家族が袋を支える代替を残します。
まとめ
備蓄しているアルファ米は、自分で作れます。しかし、避難所で机を使えなければ、右手でスプーンを使いながら袋を安定させることが難しいと分かりました。
70cmの机では、5口を1分で食べ、こぼれは1〜2粒、疲れはありませんでした。膝上では2分かかり、スプーン約1杯分をこぼし、麻痺側の支えが必要で緊張しました。別の椅子の座面ではこぼしませんでしたが、膝立ちになり、2分かかって疲れました。
机がない時、家族が左側から袋を支えると、本人は椅子に座ったまま右手で食べられました。5口は1分で、こぼれ、疲れ、緊張はありませんでした。
私の備えは、アルファ米を増やすだけではありません。
- 椅子に座ったまま使える安定した机を相談する
- 机がなければ、家族が左側から袋だけを支える
- 第三者には「食べさせて」ではなく「袋をこの高さで支えて」と伝える
- 備蓄食を、開封から食後の片づけまで一度試す
非常食は、家にあるか、避難所で配られるかだけでは足りません。本人が実際に食べられる条件まで確認して、初めて備えになります。
参考にした情報
- 厚生労働省「避難所等で生活する障害者への配慮事項等について」
- 墨田区掲載「災害時の要配慮者食支援マニュアル」
- 厚生労働省障害者総合福祉推進事業「視覚障害者のための防災・避難マニュアル」
- 国立健康・栄養研究所「避難所ではどのような人が、食事に困っていたのか?」
- 脳卒中片麻痺患者の食事動作における麻痺手参加方法および食具の形態
この記事の確認範囲
身体障害と片側の麻痺がある本人が、自宅で十分に冷ました袋入りアルファ米を使い、各条件5口ずつ1回測った記録です。実際の避難所や災害時の試験ではありません。医師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、自治体、避難所運営者による個別監修は受けていません。

